Before (改善前)

めっき上に機械加工でバリを出さずになんらかの形状を付与するとき、硬質銅めっきではなく、ニッケルリンめっきを用いることがある。
ニッケルリンめっきは、硬質銅めっきと比較するとビッカース硬さが200以上と高く、彫刻しやすいという利点がある。しかしながら、ニッケルリンめっきをダイヤモンドバイトで切削するとき、バリ(かえり)が生じることがある。現在、ニッケルめっき内にリンが含有することで、リンが潤滑剤となり切削しやするくなると理解されてきた。
昨今、加工技術と品質面の向上に伴いナノレベルでの加工精度が要求され、少しのバリでもNGとなる案件が増えている。その為、より加工性(バリが発生しない)がよい被膜の開発が必要となった。
そこでニッケルリンめっき内の吸蔵水素に着目し、快削性に相関性があるかを解析調査を行った。結果、吸蔵する水素のピークが約280℃に頂点がくるとき、めっきのバリが大きくできることが図から理解できた。

V

After (改善後)

めっきの手法を変化されることにより、水素のピークが変化するかを検討した。その結果、ある特定の浴組成、電流密度でめっき施工することにより、バリのでないめっき条件があることが分かった。

理由を鋭意検討した結果、その水素昇温脱離ピークを解析したところピークが3つでており、280℃より高い温度で2つの脱離するピークをもつニッケルリンめっきが、バリのでないめっきになることがわかった(野村鍍金開発被膜【快削くん】の誕生)。推測だが、ニッケルもしくはリンと水素の結合エネルギーが高いことが切削性向上につながっているのではないかと理解している。強く水素結合しているところが局所水素脆性を起こし、その部分で破壊されるためバリがでないと推測している。

快削くんを起用することで、「彫刻加工でバリをださない」もしくは「シャープな切削面がほしい」、「ナノレベルの表面加工を実現したい」などに効果を期待できる。

POINT(要約)

ニッケルリンめっきにおいてなぜバリがでるか解析を行った。その結果、水素の吸着るサイトが異なることにより、バリの有無に差がでることが分かった。

吸着サイトの変更は、種々のめっき条件変更により変更可能であることも併せて理解できた。結論として、リン含有量よりもむしろ水素結合エネルギーの高い水素を持つニッケルリンめっきがバリがでないことが推測された。そして野村鍍金で開発した「快削くん」がバリで問題のある彫刻やナノレベルの表面加工をするときに効果を発揮する。