汎用性が利く定量的な密着強度の試験方法

金属素材へ表面処理を行った場合の品質の判断基準は密着度(密着強度)になります。この密着度、めっき加工に関する試験方法はJIS-H-8504で定義付けされています。この中でめっきの密着性試験方法は、やすり試験方法や、砥石試験方法、へらしごき試験方法などが挙げられますが、定量的に密着性を測定出来る方法は引き剥がし試験法1つになるため、実際の試験によってすべての機械部品に当てはめることは難しい場合があります。
そこで、有効な密着度のJIS-G-0601のクラッド鋼の試験方法のせん断強さ試験をめっきの密着性の定量的評価に利用することを野村鍍金では推奨しています。めっき加工の密着強度を測定するために、基材にせん断強度を測定するめっき皮膜の加工を行い、めっき皮膜の破壊する力Pを皮膜密着面積で割った数値が、せん断強度となります。この試験方法(せん断強さ試験片による)は、以下の図の通りです。

JIS-G-0601のクラッド鋼の試験方法によるめっき加工の密着強度試験


実践的で正確な実数値を算出できるめっきの密着強度を測定する際の試験方法。

基材への加工等の手間が発生しますが、正確なめっき加工の密着度を数値によって判断できる試験方法を選択することで、間違いのない表面処理(この場合はめっき加工)の品質を確保できます。

表面処理の破断発生個所から判定する加工品質

表面処理の品質を確認する上で、せん断強さ試験による試験数値の大小も重要ですが、せん断強度の数値だけでなく金属素材と表面処理の破断する箇所を確認することも忘れてはなりません。試験によって表面処理の膜(めっき皮膜)が破断した際に、その破断の形態が加工品質を示す指標になるからです。金属素材とめっき皮膜との境界破断(剥離)を呈する場合には、めっき加工のプロセスになんらかの問題があることを意味しています。せん断試験後のめっき皮膜の破断形態は、下記の形態に分けることができます。

表面処理のせん断試験後の破断形態の3つのパターン


実践的で正確な実数値を算出できるめっきの密着強度を測定する際の試験方法。

めっき被膜の剥離・破断の内容を正しく把握することで、めっき加工に於けるトラブルについて適切な対応が可能となります。また、肉眼や金属やめっき加工・表面処理の成分までの正確な確認をしたい場合には、専門の測定・分析装置を使用することも必要になり、実際に測定することで判明することも珍しいことではありません。